大きな言語モデルが、ノート PC の中で動き出す。そのとき気になるのは、メモリが小さいほうの構成で足りるのか、それとも大容量まで出すべきなのか、です。
きっかけは、PC Watch の記事を紹介するポストでした。見出しは、メモリが 64GB の RTX Spark で何ができるかを、LLM から動画生成まで徹底的にベンチマークする、という趣旨です 1。
64GBのRTX Sparkで何ができる?LLMから動画生成まで徹底ベンチ!
— しろあ|ガジェット (@shiroa_x) 2026年10月22日
出典:https://t.co/Q8k0vSzhju
確認:2026-10-22 09:00 JST
PC Watch は、同じ RTX Spark の N1X を積んだ 64GB 機(ASUS ProArt P16 (H7607))と 128GB 機(ASUS ProArt P14 (H7407BA-SUNX1281BLP))を、別々の記事で試しています 2 3。Mobile01 が試したのは、MSI Prestige N16 Flip AI+ の 128GB の最上位機です 4。ここでは、その実測と各誌の結論を読み解きます。機種も記者も記事の日付も別なので、数字を横に並べて優劣をつけることはしません。
容量が小さいほうの機で動いたもの
PC Watch が ASUS ProArt P16 (H7607) の 64GB 機で動かしたのは、27B の LLM(Qwen3.8-27B・Q4_K_M・モデル本体は約 16.45GB)で、Windows Arm64 版の llama.cpp に DFlash2 のドラフトモデルを併用する投機デコードも有効にしています 5。
ここで読者が押さえておきたいのは、64GB が全部 GPU のメモリになるわけではない、という点です 2。PC Watch は「64GBすべてをGPUに渡せるわけではない」と書き、Windows やアプリを動かすためのメインメモリの割り当ても必要だとしています 2。この検証では、NVIDIA App で GPU へのメモリ割り当てを既定の 30.5GB から 40GB へ変更して測っています 6。
その条件で、llama-speedbench(11 カテゴリから各 5 件、計 55 件、出力長の上限は 1,024 トークン、同時実行は 1)の平均生成速度は 31.99 tokens/s でした 7。この値は 2 回目の平均で、投機デコードを併用した構成の結果です 8。
画像と動画の生成も測られています。ComfyUI のワークフローで、ウォームアップ 1 回のあとに 5 回測定しました 9。FLUX.2 Klein base 4B の NVFP4 ワークフローは、1,024×1,024・20steps でウォームアップ後の平均が約 13.9 秒 10。FLUX.2 Dev の NVFP4 ワークフローは平均約 40.2 秒です 11。PC Watch は、プロンプトを調整しながらビジュアルの案を試す用途は考えやすいとしています 12。
動画は、LTX2.5 で 5 秒分の動画と音声を生成して平均約 69 秒です 13。PC Watch は、動画の長さより処理時間のほうが長く、リアルタイム生成を達成したという意味ではないと注意しています 13。
長い入力と「待ち時間」
連続したやり取りを想定した AgentPerf Local では、コンテキスト 65,536 トークンの条件で 168 ターンを処理し、失敗ターンは 0 でした 14。一方で、入力が 65,536 トークンのときは最初の出力まで約 102 秒かかっていて、PC Watch は「『長文を渡せる』と『すぐに返事が来る』は同じではない」と書いています 15。
PC Watch の言葉を借りれば、大きなモデルが載ることと、それを高速に動かせることは別です 16。この先の判断では、この区別が効いてきます。
容量が大きいほうの機で動いたもの
PC Watch が ASUS ProArt P14 (H7407BA-SUNX1281BLP) の 128GB 機で書いているのは、載せられるモデルの大きさの話です 3。VRAM 容量は約 110GB として認識されました 3。3 ビット量子化の Unsloth 版でも 90GB 以上ある AI モデルを、丸ごと読み込めると書いています 17。
オープンウェイトモデルの Qwen3.8-Flash-Next も、小細工なしにすんなり導入でき、難度の高いコーディングをこなせるとのことです 18。たった 1 行の指示で Three.js の 3D CG を作らせたところ、20 トークン/秒以上でコーディングし、15 分ほどで想像に近い 3D グラフィックスを出力した、という記述もあります 19。
もうひとつ、PC Watch は画像生成や議事録作成などを、128GB あれば複数同時に並行動作させることも不可能ではない、としています 20。
NVIDIA は製品ページで、最大 128GB のユニファイドメモリで最大 90GB の 3D シーンを扱える、と説明しています 21。
ただし、この大容量機の記事には断り書きがあります。執筆時点ではプリインストールの標準ドライバしか使えず、本来の性能はまだ出ていない可能性がある、と PC Watch は書いています 22。
速さは、容量とは別の話
容量と速さは、別の物差しです。NVIDIA のドキュメントによれば、RTX Spark のメモリは CPU と GPU で共有され、帯域は 300 GB/s です 23。PC Watch も、メモリ帯域は最大約 300GB/s で、大容量のユニファイドメモリが強みだが、ハイエンドの単体 GPU と比べると帯域は狭いとしています 24。たとえば RTX 5090 は 32GB の VRAM と 1,792GB/s の帯域を備える、という説明です 24。
実測でも、PC Watch の小型モデルの検証では、RTX 5090 機が RTX Spark の約 5.0〜5.4 倍だったと書かれています 25。単体 GPU のメモリ内で処理できるモデルなら、据え置きの強力な GPU がはっきり速い、という評価です 25。PC Watch は「大きなモデルが載ることと、それを高速に動かせることは別だ」と書いています 16。
各誌の結論
PC Watch は、64GB 版を「128GB 版と同じことができる安い構成」と考えるのは避けたい、と書いています 26。モデル本体だけで容量を使い切るような構成や、大きなコンテキスト、複数モデルと制作アプリを同時に使う運用では、余裕が必要になる、という理由です 26。27B のモデルも、重みだけなら約 16.45GB ですが、実行時にはそれ以外のメモリを使うので、ファイルサイズだけで必要な搭載容量を決めるべきではない、とも書いています 27。
そのうえで、PC Watch は次のように分けています。1 つの量子化 LLM や生成ワークフローを切り替えて使い、その範囲が必要なメモリに収まるなら、64GB は検討する価値がある 28。使いたいモデルや同時実行数が増えると分かっているなら、128GB がいいだろう、という書き方です 28。64GB 版が合うのは、ローカル LLM、画像や短い動画の生成、制作アプリを、出先でも同じ PC で使いたい人だとしています 29。
Mobile01 は、MSI Prestige N16 Flip AI+ の 128GB の最上位機の実測を踏まえ、RTX Spark のノートを買うなら、予算が許す範囲で 128GB のユニファイドメモリを積んだ最上位版を直接買うことを勧めています 4。AI の演算、ゲーム、マルチタスクでの性能向上がはっきり感じられる、という理由です(Mobile01 の中国語の原文から訳しています)4。
PC Watch は使い方で 64GB と 128GB を分け 28、Mobile01 は予算が許すなら 128GB を、と勧めています 4。読者の使い方と予算で、どちらの言葉が自分に近いかが決まります。
価格の階段(米国と日本)
米国の Microsoft Store では、Surface Laptop Ultra の 20 コア CPU・6144 コア GPU の構成が、メモリ 32GB・1TB で $3,699.99 30、48GB・1TB で $3,999.99 31、64GB・1TB で $4,299.99 32、128GB・1TB で $5,899.99 です 33。メモリの選択肢は 24・32・48・64・128GB と Microsoft は案内しています 34。
ASUS ProArt P16 は、米国の ASUS eShop で、64GB・1TB・Windows 11 Pro・3K OLED の構成が $4,399.99 35、128GB・2TB・Windows 11 Pro・UHD+ 4K OLED の構成が $6,999.99 です 36。ストレージも画面も違う構成なので、メモリだけの差ではありません。
日本の Microsoft Store(税込)では、Surface の 48GB・1TB が 759,880円 37、64GB・1TB が 812,680円 38、128GB・1TB が 1,094,280円 です 39。
ASUS JAPAN の発表では、日本で用意する ASUS ProArt P16 (H7607) と ASUS ProArt P14 (H7407) のメモリは 48GB と 128GB です 40 41。PC Watch が試した 64GB の構成は、この発表が挙げる構成には含まれていません 40 2。
あなたはどっち
各誌の言葉を使い方に当てはめると、こう分かれます。
- 1 つの量子化 LLM や生成ワークフローを切り替えて使い、それが収まる → PC Watch は 64GB を検討する価値があるとしています [[F196]]
- ローカル LLM、画像や短い動画の生成、制作アプリを出先でも同じ PC で使いたい → PC Watch は 64GB 版が合う人としています [[F198]]
- 使いたいモデルや同時実行数が増えると分かっている → PC Watch は 128GB がいいだろうとしています [[F196]]
- 90GB 以上の AI モデルを丸ごと読み込みたい → PC Watch は 128GB 機で、3 ビット量子化の Unsloth 版を丸ごと読み込めたと書いています [[F250]]
- 予算が許すなら迷いたくない → Mobile01 は 128GB の最上位版を勧めています [[F233]]
- ゲームと Office が中心 → PC Watch は、大容量ユニファイドメモリを生かす機会は少ないだろうとしています [[F197]]
- 速さ最優先で据え置きで使える → PC Watch は、小型モデルの結果が示すとおり、強力な単体 GPU を選ぶ理由は十分あるとしています [[F197]]
買う前に、動かしたいツールの対応環境を公式で確かめてください。Mobile01 も、特定の専門ソフト、外付け機器、開発ツールを使うなら、購入前にネイティブ対応や動作を確認するよう強く勧めています 42。
大きなモデルを手元に置くなら、置き場所も要ります。
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